腹黒エリートが甘くてズルいんです
「ともこしぇんしぇ?」


ん?
開いたドアに人影はないけれど、確かに聞こえた声。
ん、と身体をずらして見てみれば、小さい女の子がガーゼ地のパジャマを着てちょこんと立っている。


「ん? あれ? どしたの、うなちゃん!」


うなちゃん、と呼ばれた女の子は、柔らかそうな茶色い髪の毛を2つに縛り、今さっきまで寝ていたであろうぼんやりとした雰囲気で、目を擦りながら、そこにいて。


「……しぇんしぇ、寝よ……」


知子先生が慌てて駆け寄ると同時に廊下からバタバタと足音が聞こえ、別の保育士さんの小さく、でもよく通る声が聞こえてきた。


「うなちゃん、どうしたの! 寝るお部屋から一人で出たら危ないよ。あら、すみません皆さん」

ひょこ、と顔を出してあたし達に向かって頭を下げると、その保育士さんが『うなちゃん』を抱き抱えて木製の暖かみのある廊下を戻っていく。


複数クラスが合同でお昼寝をして、職員は交代で休憩を取ると言っていたから、きっとさっきの子の担任はここにいる知子先生なのだろう。
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