腹黒エリートが甘くてズルいんです
「冬物なのに、しっかり、男子好みの良い感じに露出するやつ!なんならこの際胸元強調しちゃったりとか!」


「……へ?」


由依の言葉が冗談なのか何なのか分からず、思わず見上げる。
そんなあたしの困惑は想定の範囲内らしく、得意気にこっちに向かってにぃーっと笑う由依。


「飲み会、うんと良い相手と設定してもらおう、出光先輩に!」


…… へ?? なにそれ。


「いや、なんで……」


戸惑うあたしの背中に、痛みが走る。どうやら由依に強めに叩かれた模様。


「前を向くには、その先に目標物があった方が、いいんだって! 分かりやすく言えば、恋の相手を失ったなら、新しい相手で埋めればいいのよ!」


確かに、由依には全てを話した。
由依の目にあたしは『昔好きだった人に再会し、その人の暇潰しに弄ばれ、フラれてボロボロになりました』というように映るんだと思う。


でも、それは違う。
うまく言えないんだけど……あたしのショックは、この無力感は『酒井君にフラれた』からでは無いんだ。
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