腹黒エリートが甘くてズルいんです
少しずつ身体の重心を後ろに移しながら。
何となく、イケメンとの距離が近い気がして。
それでも、空けた分距離を詰められるような錯覚に陥る。


「あはは、なにそれ。なんで? 十分当たりでしょ? 莉緒ちゃん」


ちゃん付け!!
34歳にちゃん付けって、大丈夫?!


「……にしても、遅いですね、出光先輩」


『ちゃん』に、過敏に反応はせず、話を逸らしてみる。


「イデミッツーも、仕事忙しそうだもんね。営業は何かと酷使されるよねー」


そのあだ名はどのグループにおいても通用するらしい。
そう、そして肝心の出光先輩がまさかの遅刻。


あり得ないことに、初対面の男女2対2でスタートするという。
それでも、さすが社会人のあたし達。
由依の美貌と屈託のなさ、そして営業をしているというイケメン二人の気遣いトークにより、場はなんとなく温まっている。


あたしも、何を話したらいいか分からず、とりあえず目の前にいたイケメンが営業だと言うので、春から営業に異動希望を出している身としては色々聞いてみようと思って話してみたら、思いの外、食いつかれた、という。
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