腹黒エリートが甘くてズルいんです
ちょちょちょっと。
とんでもないこと言ってない? この人。


「……プッ」


菅生さんが、拳を口許にあてて笑い出す。緩くウェーブのかかった髪が、ゆら、と揺れる。

「もう、どこまで純粋なんだよ! かわいいな莉緒ちゃん。んなわけないだろ、ちゃんと真面目に仕事やってるよ、莉緒ちゃんほど向き合ってる自信はないけどね」


あ、なんだ、冗談……。
イケメン慣れしていないから、その綺麗な顔から冗談か本気かなんて読み取るスキル、あたしには備わっていない。


なんとなくホッとしつつも、まだ表情の固い自分に気付く。
さっきの由依の言葉を思い出し、なんとかして下がってきたこのテンションをあげなくては、と笑ってみる。
上手く笑えている気がしないけれど。

早く出光先輩が来ればいいのに!


……出光先輩とはあれ以来まともに喋っていないから、当然酒井くんの件についても話していない。

会ったら一応、この間の件についてお礼を言うべきなのかな、とは思っていて。
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