腹黒エリートが甘くてズルいんです
「丁度いいじゃない? 新生活についても、色々教えてくれそうだし。いいよ、菅生さんの言葉が本心なら願ったり叶ったりだもん。あたしは、菅生さんとこのまま帰りますので、お気遣いなく!」


まるで啖呵を切るような口調で、自分でもびっくりする。


酒井くんも驚いたのか、手の力がフッと緩むのを感じ、急いで手を振りほどく。

チャンスだ、と思い、そのまま、身を翻して皆のところへと向かう。
由依には後から説明するとして……出光先輩には軽い奴だと思われる? でもそれもちゃんと説明して……頭の中で色々組み立てる。


「……めたのかわかんねーだろ!」


背後から酒井くんの声が聞こえる。
色々考えながらだったこともあり、よく聞き取れなかった。
でも、もう一回戻って『今なんて?』って言うのもおかしいし。
そのまま走り去ることにする。

騙されていることだけは分かっているのに、そばにいると、ドキドキしてしまう。
笑顔を見れば嬉しいと思ってしまう。
そんな自分が凄く嫌で、バカみたいで。

とにかく、離れるしかないと思った。
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