腹黒エリートが甘くてズルいんです
ふら、と一歩後ろに下がる。

しつこくしてくる女達が邪魔で巻くようにしながらたまたま迷いこんでしまった道を急いで戻る。


仲田には好きなやつがいる。


頭の中で何かしょうもないことを考えて打ち消そうにも、できなくて。


仲田には好きなやつがいる。


夏の日差しは夕方になっても強めで、さっきまで暑かったはずなのにむしろ身体が寒くて震えてくる。


仲田には好きなやつがいる。


「酒井先輩! さよーならー」


どこからか掛けられた声に、条件反射のように片手を挙げる。


ぎゃー、きゃー、ずるいー!!

そんな声が響いていたがどこか遠い世界の言葉のようで。


体育館裏になんて迷い込まなければ、聞かずにすんだのに。
なんで、あんなとこで告白なんかされてるんだよ。
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