腹黒エリートが甘くてズルいんです
飲み進め、喋って、食べて……としているうちに、自分がさっきまで緊張していたということに気がついた。


そりゃそうだ。
大好きだった人と、20年ぶりくらいに再会したんだもん。
しかも、その人と、二人っきりでこうやって過ごしている。

相手は既婚者になってしまったし、会っている理由はあたしの今後の幸せの為のアドバイスだけど(そのわりに飽きるのが早く、もうアドバイスはないっぽいけど)それでもやっぱりドキドキするし、嬉しいことには変わり無い。


酒井君が笑う度、話す度、その表情に見え隠れする昔の彼の面影を見つけては胸が苦しくなるなんて、なんだか……変な感じ。


酔っ払った身体に、夜風はとても気持ちよくて。辺りのざわめきも、むしろ心地よい。
こうやって二人でいると、とても幸せであると思ってしまう。


「……でさー、こんなくらいでさー、……」


酒井君が身振り手振りを交えて何やら楽しげに話している。何だっけ。なんの話をしているんだっけ?

でも、なんでもいい。何を話しているとしても、楽しい。
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