腹黒エリートが甘くてズルいんです
そうだ。
あたしは、やっぱり酒井君に惹かれていて、でも既婚者だからそれ以上何も進めなくて。


どうにもならない人なのに、惹かれてしまう自分が許せないんだ。

そんなの、時間と気持ちの無駄だから。
あたしは、誰が何と言おうと35歳で幸せになるんだから。

そのためには、再会した既婚者に持った淡い感情なんてとっとと処分して、早く次にいかなくてはいけない。


タイムリミットは刻一刻と迫っている。


早く、次にいかなくちゃ。


「……莉緒?」


由依に声をかけられ、我に返る。
そして、どうやら泣いている自分に気づいて驚く。


「……由依、何なんだろう、あたし」


由依が、あたしの頭をぽんぽんとする。


「うまくいかないよねー、いい大人になっても」


『いい大人』にもほどがある。
あたしはもうすぐ35歳になってしまう。
こんなことで泣いてる場合じゃないのに。
初めての恋ならいざ知らず、今までそれなりに経験を積んできたのに。
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