金魚の見る夢


ねっとりと濃厚な温もりを暗闇の中で味わう。

体温を。

存在を。

久しぶりのデートは、初めて出会った料亭のわざわざ同じ部屋で夕食。

その後、洋画のレイトショー見て、ホテルのラウンジで酒を軽く飲んで。

その後、まあ、その、ねえ、何ですよ。

で、今に至る訳です。

ふー、と静かに長い息を吐き隣をそっと見る。

静かな寝息をたてる、監督の中には、沢山の世界が有って。

今、私はソレを独り占めしている。

そんな優越感も少しは有る。

でも、何より、広い宇宙で、永遠の中の今、この一瞬を共有している。

そんな感覚が、たまらなく・・・

こう、きちゃうのです。

キュルキュルと。

暗いホテルの部屋でそんな取り留めの無い事を考えて。

噛みしめている訳です。

奇跡を。

釣り合い的な奇跡じゃ無くて。

同じ時を生きる奇跡を。

広い宇宙で肌を寄せ合う奇跡を。

時間も空間も果ての無い世界で。

今、ここで共に生きる奇跡を。

うん、最悪の場合は監督のストーカーになろう。

なんて、そんな勇気はないけど。

今、怖いのは只一つ。

監督を失う事。

なんてさ、なんてさ。

臭いセリフが浮かぶ位今、幸せなの  です。

たまには、はしゃいでも良いじゃないさ。

うん、眠いのでもう寝ます。

おやすみなさい。
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