潮風の香りに、君を思い出せ。

君とあの家を訪ねた


わりと高そうなお店で気が引けたけど、ご馳走してくれるというのでありがたく甘えた。外階段を降りて行きながら、さっき思ったことを話そうと、数歩先を行く大地さんに声を掛ける。

「私って気が強いですよね、口が悪いというか」

「意外とね」

振り返りながら見上げて、口の端を挙げて答えが来る。そう、大地さんはそこを面白がってくれてるみたいだし、私もそういう自分は嫌いじゃない。

「俺は好きだけど、気にしてる?」

え?

「……わからないときだけ弱気なのがいけないのかと思って」

なにも気にしてないフリをして、したかった話をする。

「ごまかそうとしてるよね」

「そうかな」

なんの話をしようとしてたか、自分でよくわからなくなってくる。

今、私の口が悪いところが好きって言った? いや、そう言う意味の『好き』じゃない。だって大地さんはごく普通の態度だ。

「そんなにいろいろ無理しなくていいんじゃないの、七海ちゃんは」

下を向いて駆け下りた私の頭をぽんぽん叩いて言った後、大地さんは付け足した。

「まあ、俺は無理やりおばあちゃんち連れてくんだけどね」

「無理やりじゃないですよ?」

今度は私が振り返る。さっきも言ったのに気にしてるみたい。それにそんな風に言ったって、結局は連れてくつもりなんでしょう? 
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