潮風の香りに、君を思い出せ。
「さんきゅ」

顔だけはいいこの男は、悩んでいても笑顔は無駄に爽やかだ。

しかし中身が伴わない大地の手に負えるだろうかとあかりは考える。

難しい悩みを抱えた子に、この無神経な男。

うん、いいかもしれない。想像つくわ。のびのびできそう、お互いに。






いろいろ話して満足した様子の大地が立ち上がった。

「じゃ、俺帰るわ。明日早起きするし」

そういえば電話で、朝日を見に行くと言ってた。いいねぇ、青春だね。

最後にもう1つ、からかってみる。

「シオカゼ、つけてるんだ?」

「うるせえな、いいだろ別に」

昼間に来た時に買っていった香水。七海ちゃんに見られたくないらしく、慌ててしまってたからな。

あれだって、『大地さんの匂い』とか言われちゃったから新しいの買ったんでしょ、わざわざ。

それで、そういうつもりじゃなかったとか言われてもねぇ。全く、バカな男だ。



あいつを好きだったこと、あったなぁ昔。と走り去る大地の自転車を眺めながらあかりは考える。本人ぜんっぜん気づいてなかったけどね。

気付かれなくてよかった。男としては頼りないな、大地は。今となってはどこがよかったのか思い出せない。やっぱり顔かな。

ナナはずっと私と大地の関係を気にしてるようだった。七海ちゃんはどうかなぁ。意外と動じなさそう。あの子、もうちょっと話してみたいよね。今度また連れてきてもらおう。



七海と翌日ゆっくり話すことになるとまだ知らないあかりは、 次に来るまでには顔忘れられちゃうかなぁ、でも私から声かけちゃおう、と顔を思い出しながら店の戸締りをする。

「あかり、終わった?」

店長があかりに声をかける。大地の恋愛相談中、気を遣って奥で仕事をしていてくれたようだ。

変に嫉妬しないでこういうさりげない気配りができるところがいいよねと改めて思いながら、あかりは店長に腕を絡めて「疲れたぁ。ご飯食べに行こう」と甘えた声を出した。
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