花と光と奏で
遠い花

与えられたもの

「まだつながんねぇか……」


今日もいつもの場所で待ち合わせたあと、いつものように寄り道をして帰るはずだったのに…

彼女と正門を出たところで思わぬ待ち伏せに遭い、その相手をあしらっている時に彼女は俺の前から去って行った。

その彼女の行動に、相手が何を思ったのか気を良くして、その後もしばらく拘束された俺。やっと解放されて、彼女へ電話をかけたけど…

待ち合わせの時に切られる電源は今もそのままだった。

二人で放課後を過ごす時に、俺がスマホの電源をOFFにするようになって、それにならうように、


“私もそうします”


と言ってくれた彼女。

そんな彼女はあまりそれに執着していないから、こういうことはこれまで何度も見てきて知っている。

別にそのことが嫌なわけではなかったけど……

あんな別れ方をしたからか、今の俺は妙に落ち着かなくて、再び彼女の番号を画面に表示させてタップした。


───お客様のおかけになった番号は……………

呼び出し音の代わりに無機質な声がまた耳に入り、つい溜息がもれた。

「ハァ…………まいったな………」

彼女につながらないことに切なさが押し寄せる。

彼女からの好意を感じることが増えていて、今日もそれを感じられたからそれはなおさらに…

だけど未だに動けていない自分にイラ立ちもする。


「このままじゃダメだよな……でも怖ぇ………」


そうつぶやいた声に、俺は知らず知らずのうちにスマホを持つ手に力が入っていた。
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