遅刻ノート
「NHKニュースナインです。台風のニュースをお伝えしようと思ったのですが、今入った情報によりますと、イギリスのチコが、日本に対し国民投票を要求していることがわかりました。国民投票の内容は、『自らの要求を受け入れること』。自らの要求を受け入れることであります。この要求とは、日本に対し、遅刻の国になることを受け入れることと思われますが、これを受けまして、国会が秘密会を開きました。日本国憲法に規定のある国会本会議の秘密会ですが、これが行われるのは史上初となりました。
さて、国民投票ですので、国民の一人一人みなさんの判断で、日本が変わることとなります。
今情報が入ってまいりました。この国民投票に従わない場合、チコは自らの力により、
日本を遅刻のある国に変えると宣言した模様です。大変な状況となってまいりました。」

「いよいよだな、神林。橋高」
「ええ……」

「とくダネ!の時間ですが、チコがですよ、国民投票を要求してきたというんですね」
「はいその通りです。すでに皆様ご存知かと思いますが、日本国民に対して要求してきたと。それで、チコの望む結果が出ない場合、チコの力を行使して日本を遅刻の国にすると。言っているわけですけれども」
「どっちにしても日本は遅刻の国になるわけじゃないですか」コメンテータがははっと笑った」
「ただね、ひとつ考えなくちゃいけないのは、日本が世界を敵に回してるっていうことなんですよ。世界中から日本が責められてる。そういうなかで、日本が国際社会で
生きていくためにはもう、やむをえないともおもうんですよ。日本が北朝鮮を敵視してきた。同じ感覚で、世界は、日本を敵視してるんですよ」


神林、部長、橋高がニュースを見ている。それと同時に、遠い国で、もう性別が男か女かもわからない人物が、その報道番組を見ている。

「日本……。きっと、もっと、優しくなれるのに」

テレヴィを見る目は、遠くを見つめるようでもある。
おそらくは、遠い祖国を。

「私の手で、優しい国を作ってみせる…!」

「チコ様!」

男の声がする。

「枢機卿か。今行く」


決戦の舞台は日本へーー。
国民投票編、始まる。






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