感染学校~死のウイルス~
一瞬、辻本先生ですら動く事ができなかった。


その隙を付いて男子生徒は更に女子生徒の腕を捻りあげる。


女子生徒からは悲鳴が消え、代わりに腕がダランと垂れ下がった。


「うそでしょ……」


どこからかそんな声が聞こえてきて、ようやく時間が動き始めた。


辻本先生が男子生徒にかけより、その体を女子生徒から引き離す。


森本先生と田井先生も駆けつけて、女子生徒の体を起こした。


「お前は、何考えてんだ!!」


辻本先生の怒号が飛ぶが、男子生徒は薄気味悪い笑顔を浮かべる。


「あは、あははは……腕が一本折れた。これで人を殺せないだろ!」


そう言い、タカが外れたように笑い転げる。


あたしはその光景に青ざめて、その場に尻餅をついてしまった。


何日も校内に監禁され、食料を奪い合った結果がこれだ。


正常だった生徒まで、狂い始める。


「おい、誰かロープを持ってこい!」


辻本先生の声にアラタ先輩が軽く舌打ちをして倉庫へと走った。


辻本先生が男子生徒を床に押さえつけている間に、アラタ先輩がロープを持って来る。


そのロープで男子生徒の体をグルグルに巻きつけた。


しかし、男子生徒はそんな事をされてもまだ笑い続けていたのだった……。
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