感染学校~死のウイルス~
「開けるぞ」


辻本先生がそう言い、一気に扉を開いた。


一瞬身構えるが、ガランとしたその空間にふぅと息を吐き出した。


道具はほとんど教室に出されている状態で、見回してもなにもない事がわかった。


「ここはいいスペースですね」


そう言ったのは田井先生だった。


どういう意味かと思ったけれど、それは感染者が入ってきた時に逃げ込める場所がある。


という意味なのだと、すぐに理解できた。


「ここは広いし、しばらくは使えそうだな」


辻本先生はようやくホッとしたようにそう言い、椅子を引っ張り出してそれに座った。


体育館ではずっと床に直接座っていたから、あたしたちもそれぞれ椅子を用意してそれに座ることにした。


「机もあるし、死体も感染者もいない。快適だな」


祐矢先輩はそう言い音楽室の様子をノートに書きしるし始めた。


「吹奏楽部って、とっても人数が多いんですね」


教室の隅にまとめて置かれている学生鞄を見てあたしはそう言った。


「そうね。この学校じゃ一番多いんじゃないかしら?」


そう答えてくれたのは森本先生だった。


鞄の数は20から30ほどありそうだ。


「吹奏楽部の人たちは逃げる事ができたのかな……」


あたしはそう呟いた。
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