感染学校~死のウイルス~
ウイルスに勝つための抗体は注射などで体内に入れる必要がある。


だけどここ最近注射なんてしていない。


「……ごく微量のウイルスを教室に撒いていたんだ」


辻本先生の言葉にあたしは唖然としてしまった。


「え……?」


空音も混乱している。


「この殺人ウイルスは空気感染する。それを利用して1年B組にウイルスを撒いた」


「そ……んな……」


信じられなかった。


それじゃぁ、あたしの体内にはこの恐ろしいウイルスがすでに存在しているということになるのだ。


「本物だなんて思っていなかった。だけど、こうしてお前たちだけ生き残っているのを見ると、あれは本物だったのかもしれない……」


「教室に撒いたなら他のクラスメートたちも感染しないはずじゃないですか?」


空音がそう言った。


しかし、森本先生がそれを静かに否定した。


「抗体の効き目は個人さがあるわ。インフルエンザの予防が効く人と効かない人がいるのと同じでね。それに……抗体を体内に入れたことで同じ病状が出る人もいる」


森本先生は最後の言葉に力を込めた。


「それはつまり……辻本先生が撒いた抗体が原因で発症した生徒がいるかもしれないってことですか?」


田井先生がそう聞いた。


「可能性はゼロじゃありません。ごく少量なら発症していることにも気が付かない時もあります。最初の被害者である渋田さんの自殺がどの段階で感染して、発症したのか……」


「そ、それなら問題ないはずです!」


あたしは咄嗟にそう言っていた。
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