ポラリスの贈りもの

北斗さんと同棲して半年後、
私は両親や仲間に見守られながら結婚式を挙げた。
式場は、根岸さんと夏鈴さんが式を挙げた教会で。
そして両手で握り締めていたブーケは私の手からカレンさんの手へ渡り、
その半年後のこの教会で、カレンさんと浮城さんの結婚式が行われた。
更に一年後、カレンさんのブーケは、苺さんの手へと渡され、
幸せのバトンは、苺さんと田所くんに繋がっていった。
どうも、スターメソッドでは幸せの連鎖が起こっているようだ。


さて、皆さん。
こうして私と北斗さんのすったもんだの恋も、
ハッピーエンドを迎えるに至るのだけど、
私たちを取り巻く仲間たちはどうなったのか?


夏鈴さんは無事男の子を出産し、
その後6年越しのポーランド旅行を実現させた。
グルンヴォルトの歴史祭りを堪能しきった幸せいっぱいの夏鈴さんと、
息子を抱きかかえ微笑んでる、
父親の顔をした根岸さんが写ったポストカードが、
私たちの手元に送られてきたのは言うまでもない。


そしてカレンさんと浮城さんは、
ドイツでの仕事を終えて東京の本社へ戻ってきた。
気の強いカレンさんに浮城さんは頭が上がらず、
相変わらず尻に敷かれているけど、
それでも二人は寄り添い幸せそうだ。
独人時代、高級志向だったカレンさんが、
今日も夕方の半額セールを買い漁っている。
結婚するとあんなにも人は変わるものかと驚かされた。


苺さんと田所くんも、結婚前提の付き合いは至って順調。
ただ、恋人が神道社長の秘書である苺さんだけに、
田所くんは時々目に見えないプレッシャーと闘っている。
北斗さん曰く、
「一緒になってしまえばそんなものは跡形もなく消える」と楽観的。
でも、私はなんとなく彼の気持ちがわかるんだなー。


それから弟の流星さんと涼子さんは、二年して本社に戻ってきた。
もちろん、誰もが羨むラブラブの二人は、北新宿にある自宅マンションで、
毎晩熱く濃厚な夜を過ごしているとかいないとか?


最後に!
私、北斗星光(なるときらり)と夫、北斗七星(なるとかずとし)は……
二人で福岡の糸島に居た。
あの日のように“なごみ”の裏にある高台にテントを張って。
三脚に取り付けたカメラを覗きながら星を観ている北斗さんに、
私はコンビニで買ったドリップコーヒーを持っていく。


星光「はい。コーヒー」
七星「おおー。サンキュー。
  んー。うまい!
  もう夜は肌寒いからな、ホットコーヒーがいい」
星光「うん。そうね。
  どう?北斗七星、綺麗に撮れそう?」
七星「ああ。今日は同時に北極星も撮れそうだ。
  綺麗に入ってる」
星光「そう……ねぇ、七星」
七星「ん?何?」
星光「あのね、実は……
  私たちに新たな北極星が誕生したみたい」
七星「そう…
  新たな北極星が誕……えっ」



彼は作業する手を止め、一瞬私の言葉の意味を考えていたけれど、
ファインダーの中の星空から視線を外し、もじもじと恥らう私を見た。
その顔は、驚きと感激の気持ちでいっぱいになった表情だった。
そして私の傍にくると、両肩を掴み見つめながら確かめるように話す。


七星「星光?もしかして……」
星光「うん(微笑)予定日は、5月5日だって」
七星「そうか!できたのか!」
星光「うん」
七星「そうか…。だったら名前考えなきゃな」
星光「ほら。前にふたりで話したでしょ?」
七星「ああ。そうだったな(微笑)
  もし…男の子だったら、
  海のように広い心を持って光り輝く人生であるように、
  海星(かいせい)。
  女の子だったら、
  自分の望む願いが叶い幸せに輝けるように、
  星叶(せいか)にしよう」
星光「うん。君は海星くんかな?星叶ちゃんかな?」
七星「星光。ありがとう……」


これは、私から北斗さんへ感謝のサプライズ。
まだ膨らんでいないぺたんこのお腹を擦りながら話す私を、
北斗さんは抱き寄せて包み込むように抱き締める。
私たちの頭上では、
紺青の夜空に赤や白の光を放つ無数の星々がまたたき、
波の静かな月明りの中、凪いだ玄海の海が夜空を映して、
私たちの間に宿った命の誕生を祝福してくれたのだった。

(The end)



この物語はフィクションです。
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