約束のキミを。

チョコレート



どれくらい、時間がたっただろう。


時計を見ると、午後11:00だった。消灯時間を過ぎている。
思ったより、時間が過ぎていて驚きだ。

でも、もうみんな寝てるよね…。



私は、そっと病室に戻った。
病室は、みんな寝てるのか、カーテンが閉まっていた。

こっそり、勝くんのカーテンに向かって心の中で「ありがと」って、呟く。

レンと仲直りするって決めれたから。





でも…。レンも、寝ちゃったか…。

仲直りは明日にしよう。

私も、寝よう!

閉まっていた自分のベッドのカーテンを開けた。


























!!!!?????








なんで!!























なんと。ベッドの上にはありえないくらい大量のチョコレートがあった。

チョコレートクッキー、板チョコ、ホワイトチョコ、ブラックチョコ、ポッキー、チョコパン、チョコまんじゅう、チョコフレーク、チョコパイ、チョコマシュマロ

ありとあらゆる、チョコがすごい量、集まっていた。



「え!!!なにこれ!」
私は、思わず叫んでしまった。

いきなり、目の前のベットのカーテンが開く。

「へへ!びっくりした?」

レンが嬉しそうに笑っていた。

「え?なにこれ?」


「チョコだよ」



「それ、そうだけど…。」


私は、もう一度これでもかというほどの、チョコの山を見つめる。

「さっきは、ごめん。」
いきなり、レンが頭を下げた。

「俺、羨ましかったんだ。ずっと。
和斗は、何をやってもすごく出来て、眩しかった。憧れてた。

でも、素直に言えなくて、追いつきたくて努力しても全然ダメで。悔しかった。 勉強も運動もできて、優しくて…。ほんと。あいつすごいよ。

それにさ、みくにとって和斗は特別な存在で羨ましいと思った。

こんなにも、信じて大切にしてくれる人がいる和斗が羨ましかったんだ。
でも、あの言い方は、間違ってよな。追いつけないなら、もっと、もっと、努力すればいいもんね。」

レンは、そう言って笑った。

やっぱり、レンにも訳があったんだ…。どうして気づいてあげられなかったのかな…。
私は、何も言えずにうつむく。



「それで、みくが大切に思ってる人のこと悪く言っちゃったし、どうしたら仲直りできるかわかんなくって、とりあえず、みくが大好きなチョコレートを売店から買い占めてみました!ぜーんぶ、食べていいからさ!」

「レンたら………。ありがとう。」
あぁ。私は、なんて幸せなんだろう。

だって、仲直りするためにこんなにたくさん買ってくれるなんて、優しくて、明るくて、まっすぐなレン。やっぱり、素敵だと思う。
私の事を、こんな風に思ってくれて…。



いつの間にか、ナミダが溢れていた。



嬉しくて、優しいナミダ。



「え?なんで泣くんだよ!」


「だって、嬉しくって…。」


「泣くなよ!和斗ほど特別になれるかは、わかんないけど、友達じゃん!困ってたら俺も助けるから、寂しい時は、一緒にいるから!」

レンの、優しい言葉に、またナミダが溢れる。

人前で泣くのは、いつぶりだろう。

嬉しくて泣くのは、初めてかもしれない…。

「と…もだ…ち?」

私が、呟く。


「え?違うの?俺は、みくと友達だと思ってたんだけど。」

嬉しかった。


初めて出来た友達。



すごくすごく嬉しかった。


私の、大切な人がまた一人増えた…。


「ううん。友達だよ!レンは大切な友達。私こそ、なにも考えずに怒ってごめんなさい。私と友達になってくれてありがとう。」

私は、頭を下げた。

「あーー!よかったぁーーー!!みく許してもらえて!みくすごい怒ってたし、もう嫌われたかと思った!すごい恐ろしい目してたもん!」

そう言って、レンは嬉しそうに歯を見せて屈託なく笑う。

私は、なんだか恥ずかしくて

「あ、あのね、こんなにチョコあっても食べれないから、一緒に食べませんか?」

なんだか、ぎこちなくなってしまう。
でも、レンは気にする様子もなく、頷いた。




二人で、並んでベッドに、腰掛けてチョコを頬張る。
「げー!これ溶けてる!」

「うわぁ。シーツにチョコついちゃったし!」

「こんな時間にチョコ食べたら太りそ~」

「えー!それ困る!ニキビとかできるかもー」


二人で、いつもどおりなんてことない会話が夜の病室に響く。




それがすごく幸せを感じて、チョコレートが今まで食べた
                          どんなチョコよりも美味しくて、甘くて優しい味がした。


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