約束のキミを。

チョコと不器用

寝ても寝ても薬を飲んで熱が下がらない日々が、それから4日続いた。

喉は痛いし、関節は痛いし、耳の中は変な感じするし、気持ちが悪い。食欲もなかった。

寝ても見る夢は、レンの夢ばかり見る。

心配して、お母さんや和斗や舞さんが来てくれてるけど、なんだか申し訳ない気持ちが大きくってつい、元気に振る舞っちゃって後からその疲れが出たりした。





「お前、最近何も食べてないだろ?」

夜中、勝くんが息苦しくて寝れない私にカーテンを開けて、私の横に座る。


「平気だよ…。」

「お前のそういうところムカつく。」

久しぶりに聞く言葉だ。キツイ目で睨まれるのも久しぶり。

怖いはずなのになぜか、懐かしかった。

「平気じゃないくせに平気とか言うな。そういう無理してる顔見ると、どうしていいかわかんなくなる…。」

勝くんは、黒髪をかき上げた。困ったような私よりも勝くんのほうがツラそうな表情で…。








「俺さ2週間後に退院するんだ…。」










唐突だった。






心臓が飛び出しそうだった。


一瞬でパァンって胸が弾け壊れちゃうような感じ…。

声が出なくなるような感覚。


目の前がまっしろで、足先から頭のてっぺんまでサーっと血の気が引いてしまう。







「側に…。側にいてくれるって言ったじゃん…。」







私は、無意識にそっと勝くんの頬に右手を伸ばして触れた。

知らず知らずのうちに涙が頬をつたう。


私の熱で熱すぎる手が、勝くんの冷たい頬に触れると気持ちよかった。

「…。側にいる…。俺は無責任なことは言わない。泣いてばっかで手のかかるお前を俺が見守らなくって、誰が見守もんだよ。」

フッと笑った顔が優しくてかった。

今触れているこの目の前の人は、

私の味方なんだな…。

私の側にいてくれる人なんだな…。って感じられた。





友情以上の愛情とも言えない気持ち。

愛おしくて


ただ愛おしくて。


今まで生きてきた中で、いやこれからずっと先の未来でも
私は、この今この瞬間以上に愛おしいと心から溢れでることはないだろう。





この手の中のぬくもりが続いて欲しくて

左手も勝くんの頬を覆った。

わたしの小さい手が勝くんの整った顔を包む。


あぁ。触れてるんだって感じる。

触れられるところに今、勝くんがいる。

このまま、時が止まってしまえばいいのに…。




「ありがとう…。」
言えたのはこの一言だけだった。たくさんの言い現わせない気持ちをこの一言にだけ込めて呟いた。

「俺が退院する前に絶対治せよ」

「もちろん…。」

勝くんの優しさを噛み締めた。

窓の外に見える、月は今日は特別綺麗で、なのに涙で滲んで見えた。


















< 56 / 64 >

この作品をシェア

pagetop