ブラッド
 午前9時になると、伊里町が来る。


 互いに慣れていた。


 デカ同士、刑事事件の捜査に。


 その日も外回りに出る。


 相方がハンドルを握って、運転しながら、


「佐山、ずっと捜査してるけど、篠原も羽野も下古毛も蒸発したみたいにいないな」


 と言ってきた。


「ええ。……でもここは粘るべきです。ホシは必ず警察の前に姿を現しますから」


「そう?確信はあるのか?」


「はい。――根拠はありませんけど……」


 弱腰になっても、一応主張する。


 もちろん、事件のホシが現れるかどうかは、よく分からない。


 刑事も人間だ。
< 215 / 349 >

この作品をシェア

pagetop