ブラッド
 歩きながら思う。


 面倒なことにならなければいいが、と。


 揃って外に出た。


 伊里町が持っていたタバコ入れから一本取り出し、銜え込む。


 手持ちのジッポを使い、先端に火を点け、燻らした。


 車中が一際煙臭くなる。


 相方は美味そうに一本吸い終わった後。エンジンを掛け、冷房を利かせながら、タクシーを出す。


 揺られながら、感じる。


 今日も一日が始まると。


 殺人の容疑者と目される篠原や羽野を捜査するのが、俺や伊里町、そしてG県警のデカたちの仕事だ。


 だるいなどと言ってられない。


 夏の朝は何かと体が重たいが、スーツ姿になると、気が入る。





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