七夕幻想 《囚われのサンドリヨン後話》
「……さき、……美咲」

 ユラユラと身体が揺さぶられている。

「ん………」

 ウルサイな。
 寝返って手を払ったのに、なおもしつこく身体が揺れる。
 
 仕方なく目を擦りながら薄目を開く。

「んん⁉」
 映った姿にガバッと起き上がった。


「探したぞ。まさか、こんなところで寝てるなんて」

「た、タカトラ……さん?…何で?」

 輪郭がボヤけてはいるものの、蕩けそうな眼差しを向けて微笑んでいるのは、確かに愛しい彼に見える。
 

 夢だろうか。ギュウッと頬をつねってみる。
 イタイ!夢じゃない。
ってことは……

「あ~、分かった!また将馬サンでしょ」

「何言ってるんだ…オマエは、夫の顔を見忘れたのか?」


 “ヤレヤレ”と私は首を振って見せた。

「ハイハイ。もうサスガに騙されませんよぉ?こないだも、危うくテイソーを奪われる寸前に…」

 あれ?顔がドンドン険しくなっていく。

「な、…んだとぉ⁉アイツ人が留守の間に⁉」

 凄いアオスジ。これはもしや…本当の…

「タカトラさん⁉」

「やっと分かったか、……それよりさっきの話だが」

「あ~、ウソウソ。冗談!
 やったあ~…ホンモノのタカトラさんだぁ~~」

 私は寝惚け眼のままに、中腰の彼を引き寄せて、ギュウッと身体を抱き締めた。
 それに呼応するように、彼もまた私の腰に手を回す。

 リアルな触感。

 凄い。七夕には本当に願い事が叶うんだ。
 抱き合ったままに、彼は私の横にストンと腰かけた。



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