七夕幻想 《囚われのサンドリヨン後話》
 だけどね。
 母ではあれど、私だってまだまだ26歳のうら若き女の子。

 従業員・関係者100万人を抱える貴方の重責は承知していても……

 甘い言葉やメッセージ、時には思いっきり愛をカクニンしちゃいたい時だってあるワケですよ………



 私は再びウ~ンと唸り、逆方向に寝返った。

 あーあ。
 タカトラさんも、たまにはこんなコト思ったりしてくれるのかなぁ。

 イヤまてよ?

 ヤツが我慢なんてするわけないじゃないか。気難しそうな顔してみせて、ソッチ関係はすんごい手が早いんだから。

 相手には事欠かない彼だもの、きっと今だってナイトクラブでキンパツ美人を5人くらいは侍らせて……


「あ~っ!もうっ」

 私はガバッと起き上がった。

 ムクムクと湧き出る妄念に捉われ、今夜は眠れそうにもない。

 空調の効いた寝室を出、さらに階下の裏口から、夢遊病のようにフラりと屋外に歩きだす。

 蒸し暑い昼の残りなのか、庭の木々がムワッとした夜気をはらんでいる。

 今夜は梅雨時には珍しい晴れ。郊外の澄んだ夜空には、ミルキーウェイが横たわる。

 あの銀河を越えて、牽牛と織女は再会を果すのだ。

 神様の仕事をサボるほどお互いの愛に溺れた2人は、その罰として逢うことを禁じられた。
 そんな憐れな恋人にさえ嫉妬している今夜の私。

 年に1度だけ赦された時は、きっとさぞかし甘いのだろう、と。
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