樹の生えた彼と私の奇妙な恋
彼と私

私と彼が男と女の関係になるのにそれほど時間は、掛からなかった。


私は一時期男に対して奥手だったのが嘘のようだった。


一つ歳上の彼をリードしたと言っても良かった。


ベッドの中で彼の後ろ頭の辺りにある樹に触りながら彼にキスを何度も繰り返しした。


私の中で何かが弾けたような気分だった。


セックスに関しては昔から積極性の無かった自分が嘘のようだった。


彼の頭の樹の不思議な力ではないのかとさえ疑ったが彼は樹にそんな力は無いよと笑った。


私の中の何かが解放されたのかも知れない。


彼と付き合い始めて仕事もとにかく今出来る事を一生懸命やろうと思うようになった。


彼と直ぐに結婚したいとか思わなかった。


側に居てくれたら良かったのだ。


彼は相変わらず無口だが、私に対して優しかったし私を愛してくれてたと思う。


私は彼に頭の樹の事を何度か聞いたが彼にもそれについて分かってないようだった。


高校二年生の時に生えてきて小さな花が咲く時は少しむず痒いよと言うだけだった。


それ以上は彼自身も分かっていなかったのだろう。


彼は帽子を被ったりせずに堂々と樹を出したままにしていたが本当に時々人が驚いた顔をするくらいで彼の頭には樹が付いてて当たり前のように見えた。


喫茶店でコーヒーを頼んだらスプーンが付いて来るように当たり前の事のようだった。


或いは、車をローに入れたら前に走るようなものだった。












< 6 / 9 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop