雨上がりの恋
「んんっ…」


変な咳払いをしながら自分の肩を叩くケンイチ。


まるでコートサイドからサインを送るコーチの様だ。


「なに?」


「だから、んんんっ」


なんのよ、


「まさか、あんたが風邪引いたんじゃーーー」


「お前、ーーーブラ紐見えてんぞ。」


「えっ、」


咄嗟に自分の肩に手を当てるとーーー


「げっ、やだ…」


借りたTシャツの首周りが緩めのデザインでおまけにサイズも大きいから片方の肩が下がっていたのだ。


慌てて位置を整える。


あー、なんか気不味い。


「げっ、てなんだよ。色気ねぇな。」


ケンイチも同じ思いなのかわざとらしく乱暴に言う。


「悪かったわね、色気なくて…。」


売り言葉に買い言葉でいつもの調子で言い返したいのに思うように勢いが付かない。


自分でも分かってるつーの。


部活ばっかでお洒落もロクにせず男みたいな私なんて…テスト週間ぐらいにマスカラ塗ったところで女の子らしくなれるはずもない。


そんなの自分が一番ーーー


「ーーーねぇよ。」


「えっ?なに?」


「だから、んなこと、ねぇって言ってんの。」


「ねぇって何が?なんの話?」


ケンイチの言ってる事がよく分からないんだけど。しかも若干、キレ気味だし…。


「だーーーっ、もう。いい加減察しろっ。」


「は?」


一方的な言い草に日頃からの文句も合わせて言ってやろうかと思ったら出来なかった。


「んんんっ…」


ケンイチが私の唇を塞いだから…


ケンイチの唇で…
























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