雨上がりの恋








「こんのっ、バカざる。サッカーゴールに頭ぶつけて記憶喪失にでもなればいいのよっ。」


思わず私が叫ぶと


「いや、お前、それリアル過ぎてへこむわ。実際にありそうじゃん。」


「あんたが変なこと言うからじゃないっ。」


「変な事って自分の気持ちに素直になってんだろ?」


素直ってねぇ…やりてーっとかいうか普通?


「あー、もうやだやだ。雨、止んだよね?私、今から学校に戻って鍵取ってくる。制服乾いてるよね?」


「あっ、待てって俺も行く。」


「良いって一人で行けるもん。」


「駄目。なんかあったら俺の気が済まない。」


なによ…


今までそんな姫扱いしてくれた事ないのに。


嬉しいじゃん。


ってぜーーーーったい、言わないけどね。


外に出るとまだ空は薄暗いものの雨は止んでいた。


「梅雨って感じだよね。」


「だな。」


「でもまた、降りそうだね。」


「降らねぇよ。俺がいるじゃん。」


「なに、その自信。て言うかさ、なんであんた傘持ってこないのよ。帰りにでも降ったら困るじゃない。」


「俺を誰だと思ってる?」


「はいはい、超絶晴れ男さまでしょ?」


もういい加減聞き飽きたわ。


呆れた視線を向けるとーーー


「まっ、それもあるけど、」







ーーーーまた相合い傘出来るじゃん






「な、なにそれっ。」


まるで梅雨時の空みたいだなって思った。


晴れてたかと思ったら雨が降ってきて、降り続けるのかなって思ってたら急にスカッと晴れて。


まるで、私とケンイチの様だ。


晴れたり曇ったり時々雨に打たれたり。


まだまだ、私達は始まったばかりだけどーー


いや、もうとっくの昔に始まってたのか。


気付いてなかっただけで。


「ほら、見ろ。急に太陽が出てきた。見たか、俺のパワーを!」


「はいはい、ご苦労様。」


隣で喚くケンイチを無視してさっさと歩く。


後ろで置いてくなーとか、待てぇーとか聞こえるけれど決して振り向かない、今は。


だって直ぐに来るから、ほらね?


「悪いけどお前と違って俺、足、長いから直ぐに追いついちゃうんだよねぇ。つか、追い抜いちゃうから。」


またまた子供じみたことを言ってるわ。


だけど、これからは少しだけ。


ほんの少しずつだけど素直になろうかなーーー


「じゃあ、遅れないようにちゃんと引っ張っててよ。」


そっと私からケンイチの手を取る。


今日一番の笑顔が目の前に広がった。
























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