雨上がりの恋
俺は学校を後にすると家には帰らずある場所に向かった。


そこはーーー


「あら、いらっしゃい。んーっと2年、いや、もっとぶり?」


「ご無沙汰してます。千晶さん、相変わらずお綺麗ですね。」


「フフッ、君こそそういう事、さらっというの変わらないね。飲んでくでしょ?奢るわ。就職祝い出来なかったもんね。」


俺は学生の時にバイトしていたBAR【リラ】に来てきた。


ここは千晶さんというとても美しい女性がオーナーの店でそんなに広くはないけれど落ち着いた雰囲気とセンスの良さが人気のBARだ。


そして、俺と彼女が出会ったのもここだ。


千晶さんが飲み物を用意してくれている間にカウンター席の一番奥を一つ空けてその手前に座る。


奥の席はーーー


いつも彼女が座っていたから。


「はい、どうぞ。遅くなったけど就職おめでとう。」


何も言わなくても俺の好きなのを用意してくれる千晶さんの優しさがじわりと沁みる。


ジントニックに軽く口を付ける。


最近、いや、教師になってからというものあまり酒飲んでないしな。


結構、くるね。


そうこうしている内に店内はあっという間に席が埋まりだし、千晶さんと久しぶりに話そうにもカウンター内で忙しく動いていてそれどころじゃない。


まっ、時間はまだまだある。


俺は「これ、奥に置いてきても?」と千晶さんに鞄とスーツのジャケットを見せた。


「ごめん、助かる。」


予想通りの返事を聞いた俺は荷物をスタッフルームに置き、勝手知ったるカウンターに入った。









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