雨上がりの恋
会計を済ませドアを開けるといよいよ雨が降り出した。


ーーーーまたこのタイミング。


雨女かぁ。


曇り空で外に出るとほぼそのタイミングで雨が降り出す。


子供の時からずっとそうだ。


生憎、傘は持っていないものの、幸いにも霧雨だから少し急げばそれほど濡れることもない。


私は背筋をピンと伸ばし歩く。


これで良かったのよ。


彼はこれからの人だもの。


これから大学を出て社会人としてやるべき事、学ぶべき事が沢山ある。


6つも離れた年上のアラサーがいつまでも付き纏う訳にはいかない。


それにーーー


きっと今より世界が広がる彼の周りには私よりも若くて素直で可愛い女の子との出会いが待っている。


私は彼が出会うであろう全ての人に嫉妬し続けなければいけない。


ーーーー怖いのよ


嫉妬に狂う自分が怖いのよ。


彼を愛しすぎてしまったの。


だからーーー


終わりにするって決めたじゃない。


俯きそうになる顔をぐっと持ち上げ前を向いて歩いていく。


霧雨は少し強まってきたものの相変わらず無駄に柔らかく降りつける。


この程度の雨じゃぁ、涙も流してくれないわね。


下唇をぐっと噛み締め、つい緩みそうになる涙腺を引き締めた。







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