また、部屋に誰かがいた
エアコンのスイッチを入れる前に、とりあえず窓を開けて空気を入れ替えよう。
そう考えながら靴を脱ぎワンルームの手前にある狭いキッチンスペースを抜けようとした里那は、なんとなく室内に違和感を感じた。

「気のせいかな」

そう考えながらも
やはり気味が悪い。

玄関手前のトイレのドアの隣にバスルームへと繋がる洗面所のドアがある。

ふと、そのドアを開けて中を確認してみようかと思ったが、気を取り直して、それはしなかった。

彼女はまっすぐ部屋の奥に進み、そして窓を開けた。

よどんでいた室内の空気が薄まっていく。

カバンをフローリングの床に置き、テレビを着けると

「昨夜、江東区で起きた『女子大生殺人事件』の続報です」

ニュースキャスターの声が部屋に響く

「20歳の女子大生が帰宅したところ侵入していた男と鉢合わせとなり、ナイフで刺殺された事件の犯人が今日、逮捕されました。
逮捕された容疑者は警察の取り調べで『勤務先の同僚だった被害者の部屋の鍵を一時的に盗み出し、合鍵を作って部屋に侵入した』と供述しています。」




そんなニュースキャスターの声を
三田卓治も聞いていた。




里那の帰宅に驚いて、慌てて隠れた彼女の部屋の洗面所のなかで、


静かに息をひそめながら…






「部屋に誰かがいた」





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