また、部屋に誰かがいた

部屋に誰かがいた【死神の宝物】

北高の死神

「俺は北高の鹿島圭太や！名前知っとんのやったら失せろ！そしたら勘弁したる！向かってくるヤツは覚悟しいや！」

鹿島圭太はそう叫び、５人ほどの他校生を恫喝した。
190㎝の高身長で、ここ大阪ではもちろん神戸や京都辺りでも知る者は知る「ケンカの強い不良」
その強さは「あいつ…めちゃめちゃ強いで…」と評判で、彼の右手の甲にあるアルファベットのL字に似たアザが、まるで死神が手に携えている「鎌」に見えるといった理由から「北校の死神」と呼ばれて恐れられていた。

繁華街から少し離れた公園の片隅で６人の不良が睨み合う。
沈みかけている夕日に木立や遊具の影が長く伸びるなか。
「あほか！こっちは５人やで！１人で勝てるとでも思てんのか！」
やがて、そんな科白がきっかけでケンカが始まった。しかし、その他校生たちは一人、２人と倒され、それに圧倒された一人は逃げ、また一人倒れてしまい、あっという間に残ったのは一人。
「バケモンか…お前…」
「今頃、気づいても遅いわ！」
圭太の強烈な回し蹴りが、その他校生の顔面を直撃し、ケンカは終わった。


今年高校２年の中山玲奈は鹿島圭太とは幼なじみだった。
「圭太！ケンカばっかりして！いいかげんにしいや！」
「いたた…もうちょい優しくできんのかい！」
圭太の額に消毒薬をつける玲奈に圭太が叫ぶ。
「贅沢言わないの！有難く思いなさい！」
「……」
彼女が学校から家に帰ろうとして圭太の家の前まで来たとき、顔にけがをしている圭太と偶然会った。
「なんなん！そのケガ？圭太！またケンカしたんやね！」

そのまま彼女は圭太と彼の家の中に入り、リビングで彼のケガの手当をしていた。
「あと、１年半後には高校も卒業するんやし…ちゃんと先のこと考えてんの？」
「うるさいなぁ。オカンみたいなこと言うなや…」
「なんやて！なんなら、おばさんにチクってやろか？このこと？」
「アカン！それだけは勘弁してくれ！」

幼稚園に行くようになった頃から圭太と玲奈は家が近かったことと、お互いの親も交流があったことから幼なじみであったが、玲奈の記憶のなかの圭太は、そんな幼い頃からケンカばっかりしているイメージしかない。
玲奈がいじめられたときには、圭太が駆けつけてくれて、助けてもらったことも何度かあったし、そのときは感謝したり、そんな圭太を騎士のように感じたこともあったが…