初恋のお兄さんと私

当時、中学生だったうちのお隣のお兄ちゃんは、私の白馬の王子様だった。


どこからか、お母さんの声がした。


『顕奘(ケンゾウ)くん、東京から帰ってくるらしいわよ、よく遊んでもらったわよねえ』


「――ば、榛葉(ハシバ)」


「榛葉っ!!」


はっと我に帰る。


「明日から春休みだからって、たるんでるんじゃない!!」


春先の心地よさで、ついうとうとしてしまったらしい。


ガバッ!!と体を起こすと、ぞろぞろとみんな帰ろうとしていた。


終業のチャイムすら鳴った後だった。先生も見放し、起こしてはくれなかったようだ。


起こしたのは親友の久遠栞奈(クドウカンナ)だった。


ゆさゆさとふくよかな体を揺らせて、机に寄りかかる。


「帰るよ~なに食べて帰ろっか??」


ヨダレを垂らす。


「ごめん!!今日は帰るねっ!?」


「ええっ!?せっかく起こしてあげたのにっ!?」


ブーブーと文句を言う栞奈を引き摺るように連れると、教室を飛び出す。


呑気に寝ている場合でも、寄り道して食ってる場合でもない。



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