ノラネコだって、夢くらいみる
「じゃ、行こっか」

 そう言ってニッコリ笑う大地の笑顔は、とても眩しい。

 私の一生分の笑顔をかき集めても、あんな輝きは出せないだろう。

 そんな表情をさらっとしてしまう大地を『光』と例えるなら、私は『影』だ。

 影はどうあがいても、光にはなれない。


「あれ、日下くんの彼女かな」

「全然可愛くない」


___まただ。

 睨みつけるのも面倒なので、今度はスルー。


「日下って趣味悪いのなー」

___!

 やめて。大地を悪く言わないで。

 自分が何を言われようが平気。

 生憎私の神経はそんな繊細でもないので。

 だけど……

 大地を悪く言われるのは気分が悪い。


「……っ」
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