ノラネコだって、夢くらいみる
 大地の目つきは鋭く、威圧感がハンパない。

 優しい人ほど怒らせると怖い、とは良く言ったものだけれど。

 浅倉みたいにいつもピリピリしている(そうさせているのは私だが)人が怒るとここまでの迫力は出ないだろう。


「……わりぃ」

「ごめんね日下くん」


「わかってもらえればいいんだ」


 そう言って笑う大地は、もう、いつもの大地に戻っていた。


 私は、この時、大地を敵にまわしてはいけないと強く思った。

 きっと、今逃げるように帰って行ったあの3人も、同じことを考えたに違いない。



 大地、かばってくれたのかな?

「……私のことなんて無視してくれていいのに」

 じゃなきゃ大地が今度は何か言われちゃうかもよ…?

「鈴は可愛いよ」

 ……………え?

 可愛い、なんて生まれて初めて言われた。

 急に熱いものがこみあげてきて、話題を変えなければ、と冴えない頭をフル回転させた。



「そういえば大地、もう告白された?」

「え……」
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