ノラネコだって、夢くらいみる
「あなたが生まれること、お母さんは、ずっと楽しみにしてたわよ。よだれかけ作ったり、おむつ縫ったりしながら」

「おむつ縫うって?」

「紙おむつは使いたくないって頑固でね。今の人は、布おむつなんてあまり知らないわよね」

 ふふっ、とおばあちゃんが笑みをこぼした。

「お母さん、病気で死んじゃったんだよね?」

「………」

「おばあちゃん?」

「もっと、あなたと一緒にいたかったでしょうにねぇ」

 そう言うおばあちゃんの目には涙がたまっていた。

 いけないことを聞いてしまった。昔から親の話題は避けてきたのに、つい聞いてしまった。

「ごめん、なんでもない__」

「鈴ちゃんのママは……鈴音(すずね)はね、あなたを身ごもった時、病気にかかっていることがわかったの」

「そんな身体で産めば、命に関わるって知ってた。だから、反対してた。おばあちゃんもおじいちゃんも」

 …………!

「それでも、授かった命。愛しくてしかたないってね。この子を諦めるくらいの人生なら、生きていたって仕方ないって、そんなことを言ってきたわ。命をかけて、あなたを産んだの」

「ウソ……」

 私のお母さん、私を産んだから、死んだの?

「そんなことを聞いたら鈴ちゃんが自分を責めるんじゃないかって、そう思うと本当のこと言えなくってねぇ」

「私のせいで……お母さん……」

 頭が真っ白になる。お母さんの人生を……私が奪った?
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