ノラネコだって、夢くらいみる
「お待たせーっ」

 モモがソフトクリームを3つ持ってこちらに歩いてくる。

「あ、ありがとうモモ」

「ごめん、いちる。苺なくて桃にした。無理だったら私のバニラ食べる?」

「ううん。桃、好きだよ」

「やだ、なんか、私が好きって言われてるみたい〜」

 バカップルか。

「そろそろ時間だ」

 いちるがシャツをめくり、のぞいた腕時計……最新型のウェアラブルコンピュータ!

「時間って?」

 モモが不思議そうにいちるに問いかける。

「月山がカンカンになって僕のこと探しまわってそうだなぁ」

 えぇっ………

「これで、足りるかな」

 そう言って、いちるは後ろポケットに入っていた長財布から折れ目のない千円札を2枚取り出すと、モモに渡す。

「じゃーね」

 そう言うと、いちるは行ってしまった。…呑気にソフトクリームを舐めながら。

「お金別によかったのに。これじゃ、貰いすぎだよぉ。月山って、いちるの友達かなぁ?」

「………」

 やっぱりなにか、仕事で来てたんだ。月山さんは、いちるの…そして私のマネージャーさん。

「でも、ラッキー!いちると一緒にぶらつけるなんて。……あ!サインしてもらうの忘れた!写メも!」

 モモって、ちゃっかりしてるようで抜けてる。そんなところがまた、可愛い。

「りーんーちゃんっ」

 モモがニヤリと笑ってこちらを見る。

「話してくれるよね?いちるとの関係」

「………」

「私に言えないっていうの?まさかー」

 まさか?

「付き合ってんの?」

 …………

「ないない、違う、ありえないよ!」

「否定しすぎて逆に怪しい。そのうち吐いてもらうからね」

 そう言って、モモが立ち上がった。………聞かないでくれるんだ。

「次、何乗るー?」

「ま、待って。まだ私、半分も食べていないっ」
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