縁〜サイダーと5円玉と君の靴ひも〜
「そんなこと…」

強がって、言い返そうとしたのを辞めて、陽色をまっすぐ見た。


「そうだけど!」

プイッと顔を背けて強がってしまう。

せっかく生まれた恋を、ないことになんてできないよ。

もう、逃げない。

1回は消そうとしたこの気持ち、だれよりも私が大切にしなくちゃ。


顔が赤くなるのを必死に抑えようと、集中するけど…

焦れば焦るほど顔がどんどん熱くなる。

夜風が冷まそうとしてくれてるんだけど、私の熱は冷めない。


「でも、晴輝にキスされてたね」

陽色、目が死んでる…


グサッと心に突き刺さる。

と、同時に今度は顔が青ざめる。

その部分は消し去りたいのに、消し去れない。


「あの、それは・・・」

弱々しい声をつい出してしまったら、

「晴輝が勝手にしたことなんだよな。わかってる…でも、すごくむかついた」


子どもみたいな拗ねた顔で、不機嫌になる陽色の表情にドキドキと罪悪感とで私の心はかき乱されていく。


「ごめん」


私が謝るのも変だけど。

そっと陽色の顔を見ると、まだ拗ねてる。

どうしよう…不安になってきた時、陽色は私の顔を見て小さくため息をついた。


何?なんのため息…?

不安そうな私の顔に気づいて、陽色が穏やかな口調で言った。



「俺がもっと早く言ってればよかったんだよな、乃々夏のことが好きだって」


素敵な言葉過ぎて、録音すればよかったと後悔してしまった。


陽色を見上げると、瞳の中に私が映っていることがなぜだか嬉しくて涙がこぼれる。


陽色の声で呼ばれる『乃々夏』という名前が、すごく特別に感じた。

陽色は体を私の方へ向けて、私の手を握った。


「乃々夏のこれから先の初めては、全部俺がもらう。いい?」


強引な言葉とは裏腹に、優しい陽色の瞳にときめいて顔が真っ赤になる。


「うん。陽色じゃなきゃ、やだよ」


そう言うと、陽色の顔が近づいてきて、心拍数が大変なことに。

これはもしや巷で言うキスへの流れ?

ドラマでもよくやってるように、目を閉じた。


陽色は優しいキスをくれた。


陽色のキスはサイダーの味だった。



「大好き」


雰囲気に流されてか、無意識に漏れてしまった言葉。

陽色に言った後、顔が真っ赤になってうつむいた。

私、何言っちゃってるの。
恋は人をおかしくするんだな。

恥ずかしくて顔上げられない。

顔をグイっと陽色に上げられて、陽色と目が合う。


「その顔!破壊力ありすぎ」

陽色の言葉に傷つく。


「そんなにひどいの?」

泣きそうになる私に、

「理性を破壊させる力だよ」

そう言って頭突きされた。


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