縁〜サイダーと5円玉と君の靴ひも〜
駅に着いて、電車を待ちながらふと思った。


「春岡さんはどうしてあのヘアスタイルなの?」


あれだけ美少女なら私ならみんなに見せびらかしたいけど。


「それはね・・・」


駅に着いて電車のドアが開いた。


「おう。おはよ」


加瀬君だ。


「おはよ・・・」

少し気まずくて、照れくさくてうつむいた。


「陽色がこの格好で登校してるの不思議だわ」

加瀬君が笑いながら陽色を見た。


「そう?」

本人はまったくなんとも思ってないみたい。

自分に無頓着すぎる。


「あ、そうだ。祐奈がどうしてあんな髪型なのかって言うと、モデルしてるんだよ。雑誌に載ってるらしいんだけど。騒がれたくないらしくて、な?」

陽色が加瀬君に同意を求める。


「おう」

加瀬君、おうって知ってたんですか?


「モ、モデル?はぁ…世の中私の知らないことばかりだわ」


もう、人は見かけだけでは判断できないってことを痛感。


「いやぁ、すごすぎる」

私は、頭の中がグルグルしているというのに。

二人はいたって冷静。


「加瀬君も知り合いなの?」


私の質問に二人して笑いだす。

電車の中だから声を出せない二人は震えている。


「何?」

状況のわからない私だけがきょとんとしていた。


電車を降りたあと、

「ごめんごめん。言ってなかったけど。祐奈は晴輝のいとこなんだよ。俺たち3人が幼馴染なんだ」


陽色はわけがわからず、おろおろする私の頭をなでながらまた優しい顔をする。


「おーい。朝から見せつけんな」

加瀬君が不機嫌そうに言うと、


「仕返し」

陽色は加瀬君に舌を出して見せると、


「行こ行こ」

と私の肩を抱いてわざと早歩きをする。


「おい、待て」

加瀬君が追いかけてくる。


加瀬君、変わらず接してくれてありがとう。

私は春岡さんが彼女かもって思った瞬間、陽色の顔さえまともに見られなかった。

それなのに、加瀬君はすごいよ。

加瀬君と目が合って、笑いかけると加瀬君も笑い返してくれた。


「ありがとう」


加瀬君に言うと、


「なにが?」

ぽかんとしてる。


「ううん」

そう言って、私たちは学校に向かった。


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