詩集 イメージストリーム
象徴詩 川邊の曲


あしひきの山邊の里に ひとすぢの川あり
両岸の堤路(ていろ)のほとり 立ちすくす樹、二本
かたや松 こなたは櫻 相慕ふ 切なり
松の精 見初めし櫻 一歳(ひととせ)の変遷


にはたずみ川面に映る 艶姿(あですがた)いとしき
青むれば装い変はり 涼しげにたたずむ
茶がれてもなほまた風情 秋風のささやき
健気にも木枯らしに耐へ 蕾を育む


はなぐはし櫻の精が 憧れる常緑(じょうりょく)
一年の變わらぬ姿 貫きたる孤高
魂が、厳しく生くる 清らなる道ゆく
果つるまでかいそひてこそ 魂の本望


とほつひと松また夢む いづれの日か櫻に
胸の内伝へてともに 漕ぎ出づる大海(おほうみ)
かなしきは樹の性ならん、縛りあり、我が地に
兩の精、對岸まぼり ただまぼり 立つのみ


風雷山人
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