アイボリー~少しだけあなたにふれてもいいですか?
「お腹空いたね。」

「僕も。結局電車の乗り継ぎ悪くて、朝から全然食べてないんだ。」

「この近くにおいしいレストランがあるみたいなの。一緒に行かない。」

「いいね。」

「これが地図なんだけど。わかる?」

「これは~、わかんないや。とりあえずまっすぐ行けばたどりつけそうかな。」

「そうだね。とにかく行ってみようか。」

拓海は美鈴の手をしっかりと握って歩き出した。


ハルシュタットの湖はいつのまにか完全に藍色に染まり、二羽の白鳥が寄り添ってゆっくりと泳いでいく。

湖面に映った丸い月が、ゆらゆらと明るく揺れていた。


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