自殺少女と花見の少年
そうか。彼女はここで自殺をしようとしていたのか。

そりゃあ、これだけ綺麗に咲く桜の下で死ねたらさぞ綺麗だろう。
邪魔をしたらいけないな。


と、通りすぎることは流石にできなかった。

「あ、あのそれ・・・」

「これを見た事を誰にも言わないで」

そう言って彼女はテキパキとロープを木にくくり付け始めた。

「ちょ、ちょっと待って!君は今から死のうとしてるの?」

「そう。だから、誰にも言わないで。あと、できれば帰って」

どうやら縄をくくりつけ終わった彼女は感情の感じられない瞳をこちらに向ける。

一瞬、雪女でも来たかと思うほどに寒気がした。

けれど、流石に目の前で 自殺します と言われて はい、そうですか と言って帰るわけにも行かない。

とりあえず、なんとかして引き止めなければ。


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