見えない何かと戦う者たちへ

案の定、
文化祭は豪雨のため一時間早く終わるという校内放送がさっき流れた。

雨だったがそれなりに
盛り上がったため後悔しているクラスはないようだ。




「フッ、時が来たわ…」

「姉様、今こそちからを開放する時です!」




また訳のわからないコントを
懍と中二病がやりはじめた。

今はもうあちこちで
片付けが開始されている。

ソノのクラスでも片付けは
始まっていた。






「えっその君?」






教室がざわつき出し、
何事かとみんなの目線の先を追った。

そこには
いつも通りのまるで不貞腐れた顔した
相田ソノが立っていた。

朝からいなかったので
たぶん雨の中やってきたはずなのに、
彼は一つも濡れていなかった。

白いシャツは相変わらず
きちんとアイロンしてあるようだし
すべてが完璧すぎておかしいくらいだ。








「おい!その!どこ行ってたんだよ!」

「そーだよ、そのくん!もう片付けだよ!」







ソノの登場に
教室中が笑った。

前までなら無愛想で潔癖症もあって
あまり人と関わっていなかったソノなので、
嫌な目をされて終了だったはずが
今じゃこんなにも暖かいものになっている。

明日香と垣内は
なんだか嬉しくなってソノの元へ駆け寄った。







「そのくん!」







その前に美結が
飛び出した。

どこから走ってきたのか、それともただ焦っていたのか、彼女の額には汗が見えた。


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