見えない何かと戦う者たちへ


明日香は
その小さな男の子を見て
すぐに目を伏せた。


恐る恐る
写真に映る男の子を見る。





「……苦ッ!!」





明日香は口元に手をあて
目を大きく見開いた。

やはり
信じられない姿なのだ。








写真に映る明日香は
黄色い帽子にピンクのランドセルを背負って
元気よくピースサインをしている。

隣にいる友だちも
同じような格好だ。



しかし
後ろに映る男の子は違う。




髪はボサボサどころか
長さがバラバラでどうセットしたところで
ボサボサ頭にしか見えないだろう。

しかも
頭を怪我したのだろう、あちこちに絆創膏が
貼ってある。

絆創膏だけで済む状態ではないところもあり
頭に血の塊みたいなものもできている。




顔は目には青あざ
くちびるの端は切れていて頬は痩けている。

腕や脚は
治りかけた傷の上にまた新たな傷ができて
ひどい。

日焼けしたせいではないだろうに
なぜかめくれている肌。




服は色褪せ男の子の身長の割りには小さい気がする。

ぺらぺらの上、
もうかなりボロボロだ。




ランドセルなんてものは
まったく持っていない。





どこを見ているのかわからない
虚ろな瞳でぼーっとしている。

小学生特有の瞳の輝きは
一切見られなかった。






「…ソノくんはひどい虐待を受けていたらしいのよ」






母の言葉に一度離した視線をまた
男の子に戻した。

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