モテ子☆モテ男の恋愛事情。
涼しい顔して、ヒョイッとボールを奪って。
キレイな弧を描きながらシュートを決める。
「さすがだね…!」
「今は目の前の大きな壁がないからね」
壁。
確かに、隼人は大きすぎから。
背も、体も、態度も、全部。
隼人の話し声をこれ以上気にしないように。
あたしも負けじとバスケットボールを追いかける。
「ゆず、パス!」
泰くんが、あたしに絶妙なタイミングでパスをくれたおかげで。
お手本のようなレイアップシュートを決める。
…はずだったのに。
いつの間にか電話の終わった隼人は、なんでもなかったかのようにすぐにゲームに加わって。
あたしの放ったボールを容赦なく叩き落した。
再び現われたあたしと泰くんの前に立ちはだかる大きな壁に。
あたしたちは互いに苦笑いしするしかなかった。
「まったく、容赦ないんだから」
泰くんの呆れにも似た溜息まじりの言葉に。
隣で不貞腐れるあたし。
いつもどおりボールを追いかけては、豪快なプレイをする隼人を見て。
特に変わった様子もない。
『翔』
さっきの電話で、そう聞こえたような気がしたけど。
…聞き間違い、だよね?