Another moonlight
愛したい、愛されたい



夕方になり、窓の外が薄暗くなり始めた。

アキラがコーヒーを飲みながらぼんやりと考え事をしていると、スマホがメールの受信を知らせた。

スマホを手に取り確認すると、メールはマナブからだった。


“今夜、店に来い。話がある。”


(マナにしちゃずいぶん簡潔だな…。)

わざわざ呼び出してまでするほどの話があるらしい。

一体なんの話だろうと思いながら“わかった、後で行く”と返信した。

まだ時間も早いし、もう少ししたら行ってみようとアキラが思っていると、チャイムの音が部屋に鳴り響いた。

(誰だ?なんかのセールスか?)

ドアスコープを覗くと、そこにはいつもとはまったく違う格好をしたカンナが立っていた。

ストレートの黒髪は細かめのウェーブのかかった明るい茶髪になっていて、普段は大人しめの落ち着いた服装をしているのに、今日はやけに派手で露出の多い格好をしている。

いつもは控えめな化粧も、今日は目元を強調した濃い色合いのしっかりメイクだ。

(なんだ…?別人…?って言うか、これって…。)

どう見てもこれは、ユキを意識しているとしか思えない。

アキラの胸がイヤな音をたててざわついた。

(それに今日休みだって言ってないのに…オレが部屋にいるの、なんで知ってんだ…?)

普段の仕事の日なら、この時間にはまだ帰っていないことはカンナも知っているはずだ。

わざわざこんな時間に来てチャイムを鳴らすと言うことは、最初からアキラが部屋にいるのを知っているとしか考えられない。

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