Another moonlight
勘定を済ませてバーの外に出たアキラとユキは、暗い夜道を並んで歩いた。

「飲み足りたか?」

「全然。」

「だろうな。オマエ、酒つえーもん。」

ユキはかなりの酒豪で、女の子を酔い潰してお持ち帰りをしようと良からぬことを企む男たちを散々返り討ちにしてきた武勇伝をいくつも持っている。

アキラはユキと一緒に酒を飲む時は、先に酔い潰れないように、いつもよりペースを落としてゆっくり飲むようにしている。

「もう少し飲みたいんだけど。もう一軒付き合ってよ。」

「めんどくせぇよ。公園で缶ビール1本くらいなら付き合ってやるけどな。」

「じゃあそれでいいや。でも公園は寒いからやだ。ビールあるし、うちで飲もう。」

「しゃあねぇな…。付き合ってやるよ。」

アキラとユキは、時々どちらかの家で酒を飲む。

そのまま眠ってしまうこともあるが、ただそれだけで、どんなに酔っていてもおかしな雰囲気になったことは1度もない。

ユキの家に向かいながらアキラは、マナブがおかしなことを言っていたなと思う。

ユキも言っていた通り、今更男女の仲になるようなことはないとアキラも思っているし、それにお互い、付き合っている相手が別にいる。

(いや、だからそもそも、オレとカンナは付き合ってんのか?)

カンナより一緒に過ごす時間は間違いなくユキの方が長いと思うし、お互いのことをよく知っているとも思う。

けれど、ユキとは家を行き来はしても、やましいことは何もない。

(なんだこれ…?付き合ってるって、結局はやるかやらないかの違いだけ…?それとも付き合ってるって言うお互いの認識があるかないかなのか?)

いい歳をしてこんな初歩的なことを考えているのもおかしいとは思うものの、カンナとの関係が曖昧だと気付いた今、アキラはなんとなく胸がモヤモヤしている。

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