Another moonlight
「そっか…。悪かったな、オレがハッキリしないせいで悩ませて。」

「私…アキくんのことがすごく好きなの。そばにいてもいい?」

「…当たり前だ。カンナ……ありがとな。」

アキラはカンナの唇にそっとキスをした。

よく考えたら、キスはいつもセックスの前にするくらいで、こんなふうに優しくキスをするのは初めてかも知れない。

そう思うとなんとなく照れ臭くて、アキラは唇を離すと照れ隠しにカンナの頭をポンポンと軽く叩いた。

「腹減ったな。うまい手料理食わしてくれんだろ?」

「うん。大急ぎで作るね。」

「じゃあオレはその間にシャワーしてくるわ。ケガすんなよ。」

「わかった。」




浴室でシャワーを浴びながら、アキラはため息をついた。

(なんで“オレもカンナが好きだ”って言えなかったんだ…。)

“カンナが好きだ”と言えないことをごまかすために、キスをした。

それを気付かれたくなくて、いつもより優しくした。

そんな自分のズルさと、往生際の悪さに吐き気がする。

(ユキのことはもう考えるな…。これからはカンナのことをちゃんと好きになって、大事にすればいいんだ。アイツだってそれを望んでるんだから…。)




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