Another moonlight
アキラは、この間二人で飲んだ時のマナブの言葉を思い出した。


“彼女をユキちゃんの身代わりにだけはすんな。アキが彼女自身をちゃんと愛せなきゃ、今度は彼女を悲しませることになるんだからな”


(あれはマナ自身の経験から出た言葉だったんだな…。)

ユキを想いながら別の誰かと付き合っても、うまく行くことは一度もなかった。

付き合っていても相手のことを本気で好きにはなれず、いつも心のどこかで彼女とユキを比べていた。

だから、もう別れようと言われても痛くもなんともなかったし、去っていく彼女を追うこともしなかった。

追うどころか、実のない関係が終わることに、いつもホッとしていたようにさえ思う。

どんなに愛してもらっても、自分が同じように相手を愛せなければ、なにひとつうまくはいかない。

ユキとの決別を決めてから、以前より頻繁にカンナと会うようになった。

ユキのことは忘れてカンナのことを大事にしようと決めたはずなのに、最近はカンナと一緒にいるのが苦痛になっている。

カンナと会うたび、何も考えたくなくて、何も話したくなくて、それをごまかすようにカンナの体だけを求める。

この腕の中にいるのがカンナじゃなくてユキならいいのにと思いながらカンナを抱いた。

そうすればするほど虚しさだけが募って、それを打ち消すために、またユキの幻を重ねてカンナの体を貪った。

自分が最低なことをしているのはわかっているのに、長年想い続けてきたユキを心から追い出すことはできずにいる。

カンナを見ようとしても、その向こうにいつもユキを追い求めている。

完全にユキのことが吹っ切れない限り、このまま一緒にいても、どんどんカンナを傷付けてしまうだけだろう。

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