虚空を眺めて
月彦達は仕方なく、五郎を一人置いていくことにした。
月彦は優子と一緒に、夕暮れに沈みかけた道を歩いていた。

「ねぇ、月彦~。演劇、アンタが主人公やりなさいよ」

「はっ!?」

一瞬優子の言っていることができなかった。

「はっ!? じゃないわよ~。アンタが主人公やれ、って言ってるの」

「何で命令形なんだよ・・・」

月彦がそう文句を言うと。

「じゃぁ、お・ね・が・い♪」

可愛く目をウインクさせて言う優子。
・・・う・・・背中に寒気が走る。

「断る」

何か、嫌な予感がしたので、俺は即座に答えた。

「駄目」

しかし、優子の答えも早い。

「お前なぁ。何で、俺が主人公なんだよ。お前が、提案したんだから、お前が主人行やれよ。俺はそう言う面倒なことはしないの」

「私はヒロインをやるのよ。主人公はアンタ。いいじゃない、こんな可愛いヒロインなのよ?」

「お前・・・」

月彦は呆れて物が言えなかった。
いや、確かに優子は可愛いが、自分で言うのは・・・ちょっと。

「何よ。その目、うざい」

ごめん。
やっぱり、優子は可愛くない。

「いや、優子って不細工だなぁ―――」

パシンっ!
優子の平手打ちを月彦は見抜くことができず。
月彦はもろに食らってしまった。

「アンタ、最っ低!」

彼女は捨て台詞を吐いて、その場から走り去ってゆく。
どんどん、彼女の影は小さくなってゆく。
なんだよ・・・。
月彦はヒリヒリする、頬を擦りながら自宅へと向かう。


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