虚空を眺めて
天倉月彦はいつも、このメンバーでつるんでいる。
いつでも、どこでも一緒―――と言うほど、ベッタリな訳ではないが。
たいていの事は、ともにこなしている。

「『犯人は運動選手で、足の速いAさんに追いかけられた』『犯人は、運動選手で足の速いAさんに追いかけられた』わかりますか? 『、』の位置によって意味が変わりますが―――こそこそ、話している天倉月彦君。どう意味が変わるのでしょうか?」

その時、斉藤先生は顔を引きつらせて言った。
今にも刺激をしたら、爆発しそうな・・・。
それは、まさしく一触即発。

「え、えっと―――」

「わからない、とは言わせませんよ」

微笑みを浮かべているのに、斉藤先生からは、ピリピリと張り詰めた空気が流れていた。
やばいやばいやばい―――!!

(月彦君。先生の餌食だねー助かったぁ・・・)

(危ねぇ。寝てたのバレテたら、アウトだったぜ)

こそこそと話しているのが、月彦の耳に届く。

待て待て!
先生、他の連中もまともに話を聞いていないじゃないですか!

「月彦君。先生はがっかりしました。廊下に立っていなさい!」

斉藤先生はビシっ!と人差し指を廊下へと向ける。
月彦はトボトボと廊下に出て行く―――。

「あはははは!」

後ろから、クラスメート達の笑い声が聞こえる。

「お黙り! あなた達も廊下に立っていなさい!」

斉藤先生は怒ると。
怖い、結局、笑った連中は全員廊下へと放り出される―――。
残っているのは、斉藤先生ただ一人。

「ご、ごめん。みんな戻ってきて!」

キーンコーンカーンコーン
斉藤先生が言い終わるのを見計らったようにチャイムが鳴る。

「そ、そんなぁ~」

先生の情けない声が教室内を響き渡っていた。

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