国王陛下の独占愛

 小僧とともに走って行った先の宿屋は、いつもと違って物々しい雰囲気に
 包まれていた。

 庭先には、立派な馬車がとまり、何頭もの馬が柵につながれている。

 宿屋の中に入りきれない兵士たちや、お付きのものたちが、庭にたっていて
 その周りを物珍しさにあつまった野次馬たちがとりまいている。

 一体どういうことだろう?

 こんな町外れの宿屋に、この一行とは?


   「ソリ、こっち」


 小僧にうながされ、ソリは裏口にむかった。

 裏口にも、兵士が三人立っていた。


   「待て」


 そう声をかけられて、不審な目でじろじろ見られる。

 小僧が、精一杯の声を出して言った。


   「これは、ソリ。旦那さんが呼んでこいって言った」


 それを聞いて、兵士の囲みがとけた。


       *
       *
       *
       *


 裏口から、厨房をぬけて食堂に入り、ソリは目を見張って足を止めた。

 十人近く、お付きのものを従えた人が、隅のテーブルの椅子に座り
 じっと前を見ている。

 テーブルの前には、宿屋の主人のルカと女将のマルロがうつむいて立っていた

 そのうち、ルカが顔をあげ、食堂の入り口に立ったソリを見つけ、名を呼んだ


   「ソリ!」


 その声に、隅のテーブルにいる人がこちらを向く。

 黒よりは柔らかい、ダークグレイの髪に、青みがかった灰色の瞳の
 端正な顔立ちのその人は、ソリを見て目を細めた。
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